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最終更新日:2021年6月29日
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須磨海浜水族園にラッコがやってきたのは1987年5月10日のことでした。この年に「水族館」から「水族園」に変わるに当たり、国際都市である神戸にふさわしく外国の水族を取り入れようという目的でラッコの飼育が始まったのがきっかけです。ラッコは上質な毛皮を持つために18~19世紀にかけて乱獲され、数が激減しましたが、その後の国際的な保護活動により徐々に個体数は回復し、日本の動物園や水族館にもやって来るようになったのです。初めに来た4頭のラッコはアラスカで捕獲され、アンカレッジ空港、シアトル空港を経由して成田空港に到着し、スマスイに運ばれました。残念なことに1頭は到着3日後に死亡しましたが、その後27年の間に22頭を飼育してきました。5頭はアラスカからやって来て、9頭はスマスイで生まれ、8頭は他園館から導入したものです。
スマスイで飼育を開始してから半年後、1987年11月10日には初めての赤ちゃんが誕生しました。母親は、最初にやってきたメアリーです。出産日から推定すると、メアリーは日本にやって来た時には既におなかに子どもがいたと考えられます。1988年には、スマスイで交尾をしたサリーが出産しました。当時、他園館でも同じように繁殖が続いたことで、ラッコは比較的容易に繁殖する動物だと認識されたようです。ところが、野生からやって来たばかりの頃は順調に繁殖するものの、長期にわたり飼育していると繁殖しにくい動物であることが徐々に明らかになってきました。
国内では1990年頃から繁殖を目的とした個体の貸し借り(ブリーディングローン:BL)や、近親との繁殖を避けるための交換が行われるようになりました。スマスイも、1989年のオスのチャーリーの貸し出しを初めに、頻繁にBLや交換を行ってきました。しかし、芳しい成果を得られませんでした。スマスイでは9頭の赤ちゃんが生まれていますが、3頭は生後間もなく死亡し、無事に育ったのは6頭です。また、2003年の出産を最後にスマスイでの繁殖が途絶え、もう10年が経過しました。
ただ、1996年に新潟市水族館からやってきたオスのトコは、ラッキー(♂)、パコ(♀)、カンナ(♀)ら4頭の父親となり、繁殖において功績を残しました。さらなる繁殖も期待されましたが、2014年6月22日に、当時国内最高齢の19歳11カ月で長い生涯を終えました。
2014年8月現在、ラッコを見ることのできる施設は、全国で10園館16頭になってしまいました。一時は120頭を超えるラッコが国内で飼育されていましたが、これほど飼育数が減少した原因として、飼育下生まれのラッコは育児能力が低いことや、1989年に発生したエクソンバルディーズ号原油流出事故の影響などで野生の個体数が再び減ったために、90年代後半から米国でラッコが輸出禁止になったこと、それに伴い、飼育するラッコの高齢化が進み、より繁殖が難しくなっていることが挙げられます。スマスイでは現在、スマスイ生まれの明日花(♀)と、BLで新潟市水族館からやってきたラッキー(♂)の2頭を飼育しています。それぞれ15歳、16歳と高齢ですが、明日花は以前に子育ての経験があるため、ラッキーとの繁殖に期待がかかっています。繁殖成功を目指し、スマスイでは照明点灯時間や、水温・室温に季節変化をつけ、できるだけ野生に近い環境を整備することに取り組んでいます。また、2011年より新たに糞中の性ホルモン定量に関する研究を岐阜大学と共同で始め、ラッコの繁殖生理の解明にも努めています。
『うみと水ぞく』2014年9月号5ページ「スマスイいきものHISTORY」より
上記の掲載内容は2014年9月時点の情報です。
イタチやカワウソの仲間。腹上で貝を割るしぐさが有名だが、野生ではほかにもウニ、カニ、ヒトデなどの底生性の無脊椎動物を主に食べる。ほかの海棲(かいせい)哺乳類と違い、皮下脂肪がほとんどなく、多量に餌を食べることと上質な毛皮で体温を保っている。哺乳類の中で最も毛が多く、約10億本生えている。その上質な毛皮のため、人間に乱獲されて生息数が激減し、国際的に保護されるようになった。近年、北海道でも目撃され話題となったが、納沙布岬周辺に移植したウニの食害も発生し、その量は約18t/年とも報告されている。(『うみと水ぞく』2010年9月号スマスイ生き物図鑑)
生息地域(千島列島南部;~アリューシャン列島,南カリフォルニア沿岸.)
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