ペンギン館

最終更新日:2021年6月30日

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ペンギン館

ペンギン館屋外エリアリニューアルオープン(『うみと水ぞく』2016年6月号)

須磨海浜水族園では、体長70cmほどのマゼランペンギンを飼育しています。チリやアルゼンチンの南部、いわゆる温帯に区分される地域に生息している種なので、屋外飼育が可能です。そのエリアは、飼育を開始した1988年からこれまで、場所の変更や増築など、さまざまな変化を遂げてきました。そしてついに、2016年3月19日、ペンギン館屋外エリアがリニューアルオープンしました。

1988年当時、12羽の飼育から始まったペンギンプールは、遊園地内(現在イルカふれあいプールがある場所)にありました。1991年以降は順調に繁殖が進み、現在(2016年4月)の飼育数は56羽となりました。羽数が着実に増加する一方、飼育スペースが手狭になったことでペンギン同士の縄張り争いが頻繁に起こるようになりました。そこで、2009年に現在のペンギン館へと飼育場所を移動させたことで、飼育スペースはもちろん、プールも桁違いに広くなりました。さらにその後、野生の生息環境に少しずつ近づけるため、草木が生えたエリア、土を使ったエリアなどを造成しました。そして今回、これまでにない手法で飼育エリアのリニューアルを行ったのです。

「自然の生息環境に近づけ、野生でマゼランペンギンが行う本来の行動を展示」と銘打ち、今まで見たことのないペンギンの行動を引き出すことを目的に、リニューアルを進めました。飼育エリアは以前に比べ約2倍に拡張し、総重量約120tの自然石を使って自然の景観をできる限り表現しています。また、プールには高さ約80cmの岩場もあります。この新屋外エリアではペンギンが跳び、地面に穴を掘り、プールへと飛び込むといった、よちよちと歩くペンギンからは想像のつかない行動を見ることができます。特に、屋外エリアには飼育員のこだわりが随所にちりばめられています。

まず目を引くのは、エリア全体にある大きな自然石です。マゼランペンギンは岩場の隙間に巣を作ることがあります。その行動を見ていただくため、自然な石積みの中にあえて空間をいくつか設け、ペンギンが営巣できるようにしました。また、地面の穴掘り行動を引き出すねらいで、空間の高さをペンギンの背丈よりも低く設定しています。現在、その空間は満室状態となっており、ペンギンたちも気に入ってくれているようです。次はプールに注目です。高さ約80cmの岩場が目に入りますが、ずばりこれは「飛び込み台」です。餌を求め集団で海へ飛び込むペンギンの行動をより効果的に表現できないだろうかと、飼育員が知恵を出し合いました。それには、高い岩場だけでなく、トレーニングも必要です。まさにペンギンと飼育員の努力の結晶、二人三脚で半年間トレーニングを重ね、ようやく「ペンギンの餌やり体験」の際に飛び込む姿をご覧いただけるようになったのです。

また、プールから一番遠い場所には、飼育員手作りの巣が3つあります。その1つにはCCDカメラが設置されており、巣内の様子はペンギン館内の大きなモニターに映し出されるようになっています。ここでは、普段観察できない「ひなを育てる」行動がご覧いただけます。どのように卵を温めているのか、親はひなにどのように餌を与えているのかといった巣内の様子が観察できます。

最後のこだわりはペンギンとの距離感です。大人の方が手を伸ばせばペンギンに届きそうですし、お子さまと同じ目線の高さにもペンギンがいるという、とても距離が近い展示になっています。この距離感を実現するためには、いろいろな課題がありました。低い柵を飛び越えてペンギンが脱走しないか、お客さまがかまれたらどうするのかなど、心配は尽きませんでした。これらの課題は植物を植える場所や石の配置を工夫することで解決しました。お客さまとペンギンが近くてかつ安全でいられるような距離感を保てるようになったため、たくさんの新しい発見ができることでしょう。

ペンギンを間近で観察でき、さまざまな行動を展示できる施設は整いました。今後はペンギンの魅力をどういった方法でより効果的にお客さまに伝えていくのか、その取り組みを充実させることが目標です。スマスイのペンギン、これからもっと面白くなりますよ。

出典

『うみと水ぞく』2016年6月号2-3ページ「特集ペンギン館屋外エリアリニューアルオープン」より
上記の掲載内容は2016年6月時点の情報です。
作成者注:ページの構成上写真を省略しています。写真を含めたコンテンツは『うみと水族(2016年6月号)』よりご覧いただけます。

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