イルカライブ館

最終更新日:2021年6月29日

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イルカライブ館

須磨海浜水族園のイルカライブについて(『うみと水ぞく』2019年6月号)

迫力満点の水しぶきに観覧席からの大歓声。須磨海浜水族園のイルカライブの魅力はイルカとお客さまとの距離の近さです。1989年3月27日に始まったイルカライブは、今年で丸30年を迎えました。1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災では、イルカライブ館駆体に大きな被害はなく、イルカも無事でした。しかし、震災直後は餌の確保もままならず、与える餌を通常の半分にする、電力や海水の使用量を抑えるなど、相当な苦労を強いられました。地域の皆さま、全国各地からの温かい励ましを受け、被災3カ月後にはイルカライブを再開し、たくさんの方に笑顔と希望を届けることができました。

イルカライブは、スタートから2010年まで、毎年春にテーマを一新してきました。当初はプロの演出家が制作に携わり、ストーリー仕立てで展開されていましたが、現在はその制作・演出を全てトレーナーが行っています。毎日イルカと接するトレーナーが考えるライブは、よりイルカに親しみを抱いてもらいやすい内容へと変化していきました。道具を用いて遊ぶ、水中の音や物体の形状を識別する、エコロケーション(音響定位)を利用してクイズの正解を選ぶなど、好奇心旺盛で学習能力が高いイルカたちの生態を楽しく解説する手法を取り入れてきました。

2010年には新しい試みが導入されました。ここでは主に3例を紹介します。1つ目は、人員配置です。1回のライブを行うには、イルカを扱うトレーナー2~3人、司会、音響役、お客さまサポート役の計5~6人が必要です。それまでは司会、音響役、お客さまサポート役に専属の職員を配置し、トレーナーはイルカを扱うことに専念していましたが、トレーナーが全てのポジションを担う形へ移行しました。2つ目は、トレーナーがプールに入る水中パフォーマンスの導入です。イルカと同じ水中空間で一体となるパフォーマンスは、お客さまを魅了すると同時に、イルカにとっても新しい刺激となりました。3つ目は、夜間のライブに光の演出を取り入れたことです。2016年からはプールの壁面に映像を投影し、プロジェクションマッピングと融合したライブを開始しました。動物の魅力を最大限に引き出すさまざまな試みは、イルカとお客さまとトレーナーの距離をぐっと縮め、当園ならではの臨場感や一体感を生み出す結果となりました。

昨今、飼育動物の長期飼育や繁殖推進が重要な課題となっています。当園ではイルカの繁殖に取り組み、健康管理面の技術向上にも努めています。また、「ヒトとイルカの関係」をテーマに、介在活動、海岸飼育、行動や認知能力の解析など、研究活動にも力を注いでいます。これら30年の歴史を皆さまに伝えたいというトレーナーの思いが形になり、3月23日から5月6日まで、企画展「イルカライブ館オープン30年-平成の時代とともに-」を開催しました。イルカライブが始まった1989年は平成元年。まさに平成の時代とともに歩んだ「いのちの学習」の場だといえます。当園では「ショー」という言葉は使わず、「ライブ」と呼んでいます。ここには、動物を見せるのではなく、動物が生きるありのままの姿を表現するというメッセージが込められています。イルカライブは、イルカが思考し、運動し、餌を獲得し、生き生きと遊ぶ場です。これからもたくさんの皆さまにイルカが躍動する姿をお届けしたいと思います。

解説文の出典

『うみと水ぞく』2019年6月号2-3ページ「特集イルカライブ館オープン30年を迎えて」より
上記の掲載内容は2019年6月時点の情報です。

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