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最終更新日:2021年6月29日

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スマスイ最後の秘密部屋「うなぎの寝床」の一般公開(『うみと水ぞく』2013年12月号)

「うなぎの寝床」という言葉をインターネットで検索してみると、京都のまち並みを代表する町家の様子を表す言葉としてよく使われているようです。間口が狭く奥行きのある建て方をしているのが、町家づくりの特徴です。そのようなことから一般的に、間口が狭く奥行きの長い建物や部屋のことを、うなぎの寝床と呼んでいるようです。須磨海浜水族園にもうなぎの寝床と呼ばれる部屋があります。今年の夏、初めて一般公開をしました。

水族園でうなぎの寝床と聞くと、ほとんどの方がウナギを展示している部屋を想像されたようです。現に入り口でのお客さまのやり取りを聞いていると「ウナギだってさ、見ていく?」というような声が多く聞かれました。「いやいや、違うんですよ!実は・・・」と説明するのも面倒になるくらいで、途中から「うなぎは展示していません。」という表示を出しました。では、この部屋は何の部屋なのでしょうか。正式な名称は「標本倉庫」。スマスイが所蔵する標本を保管しておく所です。この部屋をいつから、誰がそう呼び出したのかは分かりませんが、「うなぎの寝床」という呼び名で職員の間では言い伝えられています。

うなぎの寝床と呼ばれるように、この標本倉庫は間口が4m、奥行きが24mの細長い部屋です。旧水族館時代には標本も展示していたのですが、25年前に水族園にリニューアルした後は、一部を除いてほとんどがこのうなぎの寝床に仕舞われ、お客さまの目に触れることはなくなりました。その部屋が公開されるようになった理由は単に掃除です。とにかく、むやみに詰め込まれた標本類を整理して部屋の掃除をすることになったのです。せっかくの標本です。旧水族館時代には展示されていたものも多くあり、懐かしく見ていただける方もいるだろう。日頃目にすることのない、液浸標本や剝製に興味を示してくれる方もいるだろう。ならば、公開しようということになったのです。ただ素直に見せるのでは面白みに欠ける。しかも、夏。スマスイ独特の発想により、お化け屋敷風に演出してみることになりました。

公開期間は8月1日から9月1日までの32日間、公開時間も11時から15時までの限定公開です。観覧料もお一人100円を頂きました。期間中観覧された方は4,759人。この期間の来園者が18万8,443人なので来園者の約2.5%がご覧になったことになります。ほんとに限られた方のみの目に触れたわけです。

さて、その展示内容ですが、大きなものでは鰭脚(ききゃく)類のトドをはじめ、ウミガメなどの剝製が66点。イルカをはじめ魚類に至る骨格標本46点、液浸標本は比較的大きなものが13点、小さなものは82点、甲殻類の乾燥標本185点、中でも目玉のタカアシガ二は足を広げると有に3mを超えています。さらには、貝類25点、魚類などの化石25点、クジラ関連の標本は昔の捕鯨船からの寄贈品がいろいろとあり、生殖器やクジラヒゲ、歯、耳骨、竜涎香(りゅうぜんこう)モドキ?などが150点ほど。そして、大阪湾に生息する種をほぼ網羅しているものとして貴重と思われる海藻の押し葉標本47点。それにレプリカ、民芸品、船、スマスイ建設地の地質サンプルと旧水族館の模型などもろもろを合わせて700点余りを陳列しました。

奥行きの長い部屋ですが、早い方では5分、平均的には10~15分で観覧されていました。30分もかけてじっくり堪能される方もいました。

お化け屋敷風の内部は真っ暗な通路と展示品の一部が怪しくほのかにライティングされているだけで、各自で懐中電灯で照らしながら鑑賞していただきました。その演出が良かったのか、お客さまの熱心な会話が会場に響き渡っていました。通常の水槽の展示通路での会話以上にお子さまの「これなに?あれなに?うわぁ~これ見て見て見て!」という声が多く聞かれたように思えました。その質問に対して特にお父さんが「おうすごい!これはな、クジラの胎児だ」などと親子の会話が弾む24mの通路でした。

水族館は生きた水生生物を主に見せるところです。しかし、その生きものたちは死んでしまった後も骨格や剝製、液浸などの標本となり、生きている生物以上に夢を膨らませてくれる展示物になったり、社会教育の材料や研究の対象として、真実をひもとく一助となった証拠として大切に保管されているのです。私たち職員も標本作りの大切さや奥の深さをあらためて実感した奥行きの長い「うなぎの寝床」の一般公開でした。

出典

『うみと水ぞく』2013年12月号9ページ「スマスイ最後の秘密部屋「うなぎの寝床」の一般公開」より
掲載内容は2013年12月時点の情報です。
作成者注:「うなぎの寝床(標本倉庫)」は以下の写真うち、「dsc05613.jpg」以降のページ下部5点です。

写真

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