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交流誘導電動機は、基本的に一定の回転数で回るのを得意としています。その「得意な回転数」は電動機に加える交流電圧の周波数で決まります。(交流電圧の周波数よりちょっと低めの回転数で回るのが一番良いのです。)たとえば、家庭のコンセントに来ている交流の電気は周波数が決まっています(関西では60Hz)から、この電気で交流誘導電動機を回すと1秒間に60回転(単極の場合)より少し低い回転数で安定して回ります。
さて、この交流誘導電動機を電車の駆動用に用いたければ、回転数を自由に制御できなければなりません。となると、加える交流電圧の周波数を自由に変化させる必要が出てきます。また、同じ回転数でもトルクを自在に変化させるためには、電圧も制御しなければなりません。この作業を見事にやってのけるのが、VVVFインバータ装置です。(VVVFとは、Variable Voltage Variable Frequencyの略で日本語に訳すと「可変電圧可変周波数」となります。インバータは「逆変換器」です。)
VVVFインバータ装置は直流の電気から任意の周波数と電圧の交流を作り出すことができます。ですから、この装置があれば、 交流誘導電動機を好みの回転数とトルクで自由自在に回すことができるわけです。
ところで、VVVFインバータ装置は半導体を使って交流を作っています。電車の駆動用に使うには、大電力を高速で入り切りできる高性能の半導体スイッチが不可欠です。電車のVVVFインバータ制御は、近年の電力用半導体技術の著しい進歩により初めて可能になった制御技術と言えます。