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電車の中の照明や冷房装置、制御回路などは、交流200Vや直流100Vなどの「低圧」を使用します。
架線から受ける1500Vの直流を変換して、この交流200Vや直流100Vを作り出すのが、「低圧電源装置」です。
1000形、2000形では、低圧電源装置に「MG」(Motor Generatorの略。訳すと「電動発電機」)を使っています。その名のとおり、直流1500Vの電動機(モータ)で、交流発電機を直接回して交流200Vを発電するという、単純明快な仕組みです。(1000形第16編成以降の3編成はSIVに更新しました。また2000形4編成も順次SIVに更新します。)
直流100Vは交流200Vをさらに変圧器(トランス)で降圧した後、整流器で整流して作ります。
一方、3000形、5000形(一部の1000形、2000形)では、低圧電源装置に「SIV」(Static Inverterの略。「静止形インバータ」)を採用しています。基本原理は、「半導体スイッチ」を使った「インバータ」で直流1500Vを交流に変換し、それを変圧器(トランス)で変圧して交流200Vを作るというものです。
(直流100Vを交流200Vから変圧器と整流器で作るところは1000形・2000形と同じです。)
「MG」は直流電動機と交流発電機の組み合わせですから、機械的な部分が多く、保守に手間がかかります。直流電動機には、あの厄介な「ブラシ」と「整流子」が付いていますし、他にも機械的な摩耗部分が存在します。また、冷却用ファンや回転による騒音も気になります。電気を一度機械的な動きに変換してから再び電気に戻すので、効率も良くありません。
対する「SIV」は、基本的に機械的に「動く」部分が無く(「静止形」と呼ばれる所以です)、保守が簡単です。電気を電気のままで直接変換するので、MGに比べて効率が良いです。効率が良い分、無駄な熱を発生しにくいので、冷却用ファンも不要となり騒音をほとんど発生しません。もちろん、無駄が少ない=省エネにもなります。さらに、「鉄と銅の塊」である電動機や発電機が不要なのでMGに比べ軽量です。
良い事ずくめのSIVですが、実現には大電力を高速で入り切りできる高性能の半導体スイッチが不可欠でした。VVVFインバータ制御と同様、SIVは、近年の電力用半導体技術の著しい進歩により初めて可能になったと言えます。