全国でニホンジカが増えています
2022年5月12日に、神戸市灘区の市街地にシカが出没しました。
全国的にみると、この30~40年でニホンジカが分布している地域は約2.7倍に拡大、推計される個体数は約9倍に増えています。兵庫県でみても、住民などへのアンケートからは「シカをよく見る」と回答した範囲が広がっています。
このようにシカが増えているのは、メスが約2歳から毎年1頭を出産する高い繁殖力を持っているためです。それだけでなく、地球温暖化によって積雪が減ったことやシカを狩猟する人たちの減少などで死亡率が低下したからといわれています。
増えすぎたシカは私たちに身近な問題になっています。
出典:ニホンジカの密度分布図・個体数推定調査結果(環境省)
出典:シカに関するアンケート結果(兵庫県森林動物研究センター)
シカが増えるとどうなるのか
森林破壊が進みます
シカが増えると、下草や樹木の若芽を食べつくしてしまうなど森林環境が衰退してしまいます。これにより、土砂災害の危険性が高まったり、他の動植物にとっての生育環境が悪化してしまったりします。特に、かつて「はげ山」だった六甲山は長年の植林事業によって緑豊かになってきました。それが再び、土砂災害が起こりやすい状況になってしまうおそれがあります。
人の生活にも被害が出ます
シカが増えて人の生活圏へ入ってくることで、農作物の食害など農業への影響や、交通事故や家財の破損といった被害が出てきます。
シカにはマダニが寄生しています。マダニはダニ類の中では大型で吸血性のダニです。人が噛まれると、さまざまな感染症を発症するおそれがあります。特に危険なのは「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」で、現時点では有効な抗ウイルス薬はありません。国立感染症研究所の最新の研究によると、日本のSFTS患者が一定の期間内に死亡する割合は約30%です。
また、ヤマビルもシカの分布拡大に伴って、生息域が拡大しているといわれています。ヤマビルは人間の足首などから血を吸うので、登山者に被害などをもたらすことも考えられます。
マダニ
写真:馬原アカリ医学研究所
ヤマビル
写真:兵庫県
神戸市の豊かな生物多様性を保ち、私たちの暮らしを守っていくためには、シカがこれ以上増えすぎないように、捕獲・定着防止に取り組む必要があります。
シカに出会ってしまったときは
近づかず、触らず、静かにその場を離れるようにしてください。また、「鳥獣相談ダイヤル」にご連絡をお願いします。
鳥獣相談ダイヤル
電話番号:078-333-4408
受付時間:8時~21時(年中無休)
神戸市でのシカ対策(令和4年度6月補正予算)
六甲山に、シカをリアルタイムで監視するための通信機能付センサーカメラを新たに導入し、シカの侵入・定着防止対策を強化します。